海宝堂〜海の皇女〜
「いいえ、今、急に私がいなくなったら、みんな、今度は軽いヤケドだけでは済まないわ。きっと隠してると思われて酷い目に…それは絶対に嫌なの。それならいっそ、城に…」

「ちょっと待った。」

ストップをかけたのは、ニーナ。ニーナは人差し指を立てて笑顔を見せた。

「条件次第では、乗せてあげなくもないわ。」

「え…?」

「ニーナ!乗せるのかよっ!」

反対だと言わんばかりのリュートと黙ったままのガルを引き寄せ、頭を突き付けて話し合いを始めた。

「条件だとぉ?お前らシルフェリア様がお困りだと言うのに…」

ペックがものすごい形相でニーナ達をを睨んだ。
しかし、当のニーナはひょうひょうとして顔を上げた。

「あら、シーファを乗せることによって私達だって危険になるわけでしょ?それなら当然よ。
いいわね?」

話し合いは完全にニーナが主導権を握っていたようでリュートはしぶしぶの了解のようで頬を膨らませている。ガルは無表情のままだ。

「シルフェリア様、聞くことはありません!船ならこちらで用意します…」

「…条件を言って。」

ペックの言葉を制してシーファはニーナを真っ直ぐ見つめた。

「この紋章に見覚えは?」
ニーナが取り出したのは、あの神殿の紋章を写した紙。手がかりは王家にあるかもしれない、ニーナはそれを忘れてはいなかった。

「それは、女神像の紋章…」

カーラの呟きにニーナは大きくうなずいた。

「そのとおり、王家の姫様ならこの紋章がモチーフになった何かを持ってない?私達のこれからの旅に必要なの。」

「……物は持っていないわ。城にいたときもその紋章が形になったものは見なかった、でも…」

シーファはおもむろに部屋にあった花瓶を取ると、頭からその水をかぶった。

「!シルフェリア様っ!」

みんなが目を丸くする中、シーファはさらにシャツのボタンを外し始めた。

「シーファ!何もそこまでっ…」

「違うの、物はないけど、生まれた時からその紋章はずっと一緒だったの。」
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