海宝堂〜海の皇女〜
視線をおろすと、Vに開いたシャツの襟から覗く肌がボンヤリと光っていた。
ニーナが近くに寄ると、その光は紋章と同じ形をしていた。

「花瓶の水だとこれくらいだけど、海に入るともっとはっきりしたものになるの。これじゃダメ?」

「海に入ると…?それって…」

ニーナは神殿に書かれていた言葉を思い出していた。
そして、顔を上げると満面の笑みを見せた。

「いいわ!一緒に行きましょう、シーファ!」

「ホントに…?でも…」

シーファはリュートを見た。まだ怒っているだろうと思ったからだ。
しかし、リュートにそんな様子はなく目をキラキラさせてこちらを見ていた。

「大丈夫。あいつは単純なのよ。お宝の事になると他はどうでも良くなるの。」

「シーファぁっ、でかしたぞっ!これであの神殿に入れるぞぉっ!」

リュートはすごい勢いで走ってきて、シーファに飛び付いた。
シーファはなんとかこらえて、戸惑いながらも嬉しそうに笑った。


―――――――――――――――

その夜、シーファ達はそのままペックの屋敷に世話になることとなった。

一緒に行くと決まったのなら一刻も早く、と言うペックを説得するのは大変だった。
しかし、あれだけ長い間話していたのに、シーファを探して騒ぎが起きないということは、逃げた奴の仲間は近くにはおらず、1人では戻るにしても時間がかかる、なら明日出発しても十分だろうというガルの言葉にようやく納得したのだった。

リュート、ニーナ、ガルに一部屋が当てられ、シーファは自身の希望で子供達と同じ部屋に泊まることになった。

シーファは子供達の可愛い寝顔を見ると、部屋を脱け出した。

ひんやりとした廊下の窓から見える街、慌ててここに来てしまったから、家がどうなったか全く分からないまま、火はすっかり鎮火されていた。
みんなが眠りにつき、月だけが明るかった。

「明日からは海の上だ、しっかり休め。」

振り向くとガルがこちらをいた。

「あなたは?何をしているの?」

「……………トイレだ。」

シーファは声をひそめて笑った。

「…笑うな。」

「ごめんなさい。
でも、うちの子みたいだなと思って。」

ガルは肩をすくめ、窓にもたれ掛かった。
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