海宝堂〜海の皇女〜
「よし!上陸〜。
なんかここまで来るの長かったなぁ〜」

リュートは砂浜に降り立ちうーん、と、空に両手を伸ばした。

続いてニーナ、シーファ、最後に錨をおろしていたガルが上陸した。

「リュート、忘れ物ないわね?」

「ああ!ばっちりだ。」

リュートは腰にかけたカバンを叩いた。

「お前こそ、紋章忘れてないだろうな?」

「あんたじゃないんだから、大丈夫よ。」

「どうした?大丈夫か?」

砂浜でつっ立ったままのシーファの頭を軽く小突いて後ろからガルが言った。

シーファは暑さから上は腰の上辺りで結んだTシャツに短パン。膝から下と手には布を巻き付けてあった。
他の3人はいつもと変わらないが、ただ、いつもと違って武器を携帯していた。

「なんだ?あ〜さては緊張してんなぁ〜」

「う、うん…少しね…」

「大丈夫だって!俺たちが一緒なんだから、な!」

リュートがいうが、2人はすたすたと先に歩き始めていた。

「あ!おいっ、待てよ!
いくぞ、シーファ!」

リュートはシーファの手を引いて走り出した。



砂浜の先には木々が繁り、進むにつれて、その密度は増えていった。
肩にひんやりとした空気が触れる。
キョロキョロするシーファに比べ、3人は迷いのない足取りで進んだ。

しばらく歩くと、木々の向こう側に古い建物が見えてきた。

「ここ!ここ!
ほら、シーファ。あそこに石板があってよ…」

リュートがまたシーファの手を引っ張る。
よろけながらもついていくと、石で出来た壁の横に文字の刻まれた石板が確かにあった。

「こう書いてあるんだぜ!
―――黒き流れを…

あれ?なんだっけ?」

「―――黒き流れをたずさえし王家の者よ その紋章を我に捧げよ
さすれば懐かしき故郷への道が 開かれる―――
よ。それくらい覚えときなさい。」

後ろからニーナがため息をついた。
そして、カバンの中を探り、紋章を取り出した。

「さ、準備はいい?」

みんな、目を見合わせて力強くうなずいた。
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