海宝堂〜海の皇女〜
ニーナは慎重に石の壁を調べ、その中央に紋章が刻まれているのを発見した。
自分の持っている首飾りと見比べるとぴったりの大きさだ。
ニーナはとても嬉しそうに笑った。

そっと、壁の紋章に首飾りを近づける。

ゴクリ…
リュートが唾を飲み込んだ。
緊張の一瞬、心臓が早鐘のように打ち続けている。

紋章と首飾りが見事に重なった。

「やった!」

ニーナは思わずぐっ、と拳を握った。
みんなの目にも期待が輝く。


しかし…いつまで経ってもなにも起こらない。
石の壁に変化が起こるどころか、その辺にいる鳥や虫にさえ動く気配はない。

じっと見ているのにも飽きたリュートは、つまんねえとでも言いたげな顔で頭を掻いた。

「…なんで?ちゃんとした王家の紋章なのに!
どうしてなにも起こらないのよ!」

ニーナは珍しく取り乱し、首飾りを何度も壁に押し付けた。

「ニーナ…一応それ、城の宝…」

「役に立たなきゃ、ただの首飾りよっ!」

「……黒き流れ…」

「ガルっ!何っ!?
言いたいことがあるならはっきり言って!」

半分ヒステリーを起こしつつあるニーナはものすごい目でガルを睨み付けた。
流石のガルもびくっとする。

「いや、文には黒き流れってあるんだろ?
その条件はクリアしてるのか?」

「黒き…黒き流れ…」

ニーナはぶつぶつと呟きながら考え込む。

と、横からリュートが紋章を奪った。

「ちょっと!返しなさいっ」

「お前がやってダメなら、他の奴で試せばいいだろ?
最初は俺〜。」

リュートが改まって、紋章を壁に近づける。



やっぱり何も起こらない。

「ちぇっ…じゃあ、次はシーファ!ほらよ!」
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