海宝堂〜海の皇女〜
「えっ!わっ…とと…
私がやっても同じような…」

自分の所に飛んできた首飾りをなんとかキャッチし、首飾りとリュートを見比べた。

「いいから、いいから。
ほれ、ここ来て。」

リュートが手を引っ張る。
ガルに助けを求めようとするが、ガルは黙ってうなずいた。

首飾りを胸の前に持ち、両手でそっと壁に当ててみる。
…やっぱり何も起こらない。

「ほら、やっぱりダメ…
―――っく!」

シーファが紋章を下に下ろすと、突然胸に痛みが走った。

「シーファ?お、おい…」

顔を歪めるシーファにリュートが顔を覗きこみ、ガルが駆け寄る。

少し離れていたニーナも駆け寄ろうとすると、ボンヤリと壁の紋章が光って見えた。
ニーナがシーファを見るとシーファは痛そうに身を屈め、まとめていた髪が一筋さらりと落ちた。

「…黒き流れ…王家の者よ…」

「おい、ニーナ!シーファが苦しそうだ!おいっ!」

ニーナは、はっとしてシーファに近付くと、シーファの前にいたリュートを押し退けた。

「!なんだよ!」

「シーファ、髪の毛おろして。」

文句を言うリュートは無視で、シーファに真剣な視線を向ける。
顔を歪めながらもシーファは髪をほどく。
長い黒髪が流れを作った。

「それでもう一度、紋章をかざして。」

「おい、ニーナ。」

「私の予想が当たってれば、これで開くから!
シーファ、少しだけ我慢して。」

シーファはうなずくと、ゆっくりと腕を伸ばした。

ざわざわと木々が音をたて始める。
壁の紋章がぼんやりと光を発している。

「あ…」

「ほら、ほら!」

嬉しそうに跳び跳ねるニーナ。
しかし、それとは対照的にシーファの顔はますます痛みに歪んだ。

「ニーナ、やっぱり様子が変だ。どこか調子が悪いのかもしれん…」

シーファの顔を見て、ニーナは紋章を持つ手をそっとおろさせた。

「ごめん…もういいよ。」

首飾りが下げられ、シーファと壁の間に何も無くなった瞬間、壁の紋章から光が伸び、シーファの胸を照らした。
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