海宝堂〜海の皇女〜
光が胸に当ると同時に、シーファの体が硬直し、ぶわっと風が巻き起こった。

「あっ…ああああああっ!」

風はシーファを中心に起こっていて、後の3人は風の勢いに思わず目をつぶる。

シーファの叫び声が最高潮に達した時、ガラガラと何かが崩れる音が聞こえ、直後、風は消え、シーファの声も途切れた。

「シーファ!大丈夫か?」

大きく肩を上下させているシーファ。
慌てて駆け寄ると、ゆっくりと前方を指差していた。

3人が指差す方向を見ると、そこに石の壁はなく、ぼっかりと暗い穴が口を広げていた。

「開いてる…」

「壁が跡形もねえ…
シーファ、お前一体何…」

シーファの方を振り向いたリュートが突然顔を真っ赤にした。

「リュート?」

「何どうしたの?」

「む、むむむ胸っ…」

「胸?……シーファっ!」

ニーナに言われて自分の胸に視線を下ろすと、Tシャツはビリビリになり、それはもう見事に見えてしまっていた。

「う…ぎゃあああああああっ!!!」

そのシーファの声で辺りの鳥が一斉に飛び立った。


―――――――――――――――


「で、紋章はどうなってた?」

一旦船に戻り、着替えを済ませると、一緒に戻ったニーナが聞いた。

「うん…なんか、くっきりしてた…
やっぱり、首飾りじゃなくてこっちに反応したのかなぁ?」

紋章の辺りを撫でながらシーファはため息を漏らした。

「きっとそうよ!
じゃなきゃ、服が破れた説明がつかないわ!
すごい力で引き合ったのよ!」

やはりニーナも海宝堂の一員。目を輝かせて語っている。シーファとは正反対だ。

「だからって…はあ〜」

「もう、気にしないの!
あんな奴まだガキなんだから、見られた内に入んないって。」

「そんな簡単に…」

落ち込むシーファの背中をニーナは優しく叩く。

「それとも〜他に見せたい人がいたとかぁ〜?
少しぐらい照れると可愛いげがあるのにね〜」

うずくまるシーファに平然と船に戻れと言ったガルの顔が浮かぶ。

「ニーナっ!そんなわけないでしょ!」

先を走るニーナをシーファは追いかけた。
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