海宝堂〜海の皇女〜
「はぁ〜…」

神殿の前に座り込んで、リュートがまたため息を吐いた。

「なんなんだ、さっきから。うっとおしいぞ。」

「…だってよ…なんか、顔、合わせにくい…」

リュートだってお年頃。不可抗力とはいえ、見てしまったモノに対してそう簡単に割り切れはしない。

「普通にしてろ。
もうけもんだと思ってな。」

「ガル…お前、案外酷いな。
それとも、怒ってんの?」

ガルの拳がリュートの頭をとらえるが、リュートは間一髪、避けるのに成功した。

「わかったよ!もう言わねぇから!………はぁ〜」

「…リュート。」

「いや、『うぎゃあ』って、色気なくね?」

2人が吹き出すと、調度ニーナ達が戻ってきた。


―――――――――――――――


「中は暗いのね…」

「何が目的の神殿なのかしら…入り口があれじゃ、お祈りには来れないわよね?」

4人は一列になって暗い神殿の廊下らしき場所を歩いていた。
先頭のガルの持つたいまつの灯りだけが頼りの綱だ。
二番手のニーナ、三番手のシーファが推測を交わしながら続き。
シーファの後ろをリュートがついて行っていた。

人が1人通れるくらいの廊下は少し歩くと終わり、広く丸い部屋に出た。

「ねぇ、壁に絵が描いてある。」

薄暗いたいまつの灯りが部屋の壁中に描かれた壁画を照らし出す。

「男と…女?
島の言い伝えか何かか?」

「男の方は…王子?みたいだな。」

どうやら壁画は一つの話しになっているようだ。

男と女が恋に落ちる…
ありがちな伝説だ。
丹念に絵の全てを調べていたニーナが首を振る。

「絵にお宝が描き込まれているわけじゃないし、特に隠し扉もないわ。
先に進むしかないわね。」

やって来た廊下の対角線上に、下に伸びる階段があり、そこはまた人1人しか通れない細さだった。
< 92 / 200 >

この作品をシェア

pagetop