機械仕掛けの心の行方
頭の中を、様々な幸福な思い出が駆け巡る。

決して忘れることのできない全ての出来事が、刻み続けられていた私の記憶が、私の胸を引き裂くように飛び回る。

彼らと過ごした日々。

その一日一日が。

一瞬一瞬が。

まるで、昨日の出来事のように。

次々とフラッシュバックする記憶の群れに、私の回路はショートしてしまいそうだった。



野菜を残す彼ら。



注意しては苦笑いをするマスター。



幼い彼に笑いをと、ジョークを披露する私。



それを見て何の反応も返さない息子。



マスターを亡くし、いじめを受けた息子。



何もできない私を、救ってくれた。



成長を重ね、マスターに似たその笑顔。



彼らが見せた笑顔が。



彼らがくれた温かさが。



飛び回り、飛び回り、消えない。

そしてそれらに触れることは、もう私にはできない。

もう私には、触れられない。

触れていただけない。


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