機械仕掛けの心の行方
互いの誕生日(私の場合、誕生というわけではないのだが)を祝うことを、彼は何より望んだ。

私の方を祝っていただける場合には特に何も困ることはないのだが(恐縮する気持ちはあるのだけれど)、彼の誕生日を祝うのにはいつも苦労した。

誕生日には何かしらの贈り物をせねばならない。

息子は、


「別に何もいらないよ」


などと言うが、そうもいかない。

マスターも息子も、私のことを祝ってくれた。

機械である私などを祝ってくれたというのに、どうして人間である息子を祝えないでいられようか。

しかし、彼が何を欲するのか、私にはいつも分からないのだ。

私には欲がない。

私はただ与えられた役目に従い動くのみで、それ以外を必要としないからだ。

故に、人間の欲というものが理解できないことが間々ある。

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