機械仕掛けの心の行方
分からないことだらけながらも、私は日々の業務をこなしていった。

マスターはずぼらな人で、私が起動した当時の環境は酷い有様だった。

洗濯物や洗い物が何日分も溜め込まれ、床は見える部分の方が少なかった。

どれほどの雑菌が繁殖しているのか、検討もつかない。

きっとこれも離婚の一因になったに違いない。

過去にマスターの妻であった誰かは、さぞかし苦労したことだろう。

もっとも、私としては自分の仕事が分かりやすくて助かるのだが。

手のつけようのない状態から約一週間、私は部屋と言う部屋を片付け、磨きに磨いた。

結果、何処に出しても恥ずかしくない仕上がりとなった。

自分の仕事の成果に私は誇りを持ったが、マスターからは


「落ち着かない……」


との評価を下された。

個人の好みを把握して掃除の量を調整せねばならないのか。

私は一つ学習した。
< 8 / 128 >

この作品をシェア

pagetop