ぞっこん

「やだっ!やめて下さい!」

じたばたする私を近くにいる数人の男性達と水着姿の美女達が目を点にして眺めている。

「暴れんなよ。本当は嬉しいくせに」

「はぁ!?何をバカなことを…」
「悪いようにはしねぇから安心しろ」

有無を言わさず彼はクーラーボックスと私も持って歩き出した。

離してくれる気がない彼に私は諦めて静かに担がれた。

もう!どうして男の人ってこんなに乱暴なのっ!
麻場君だったら絶対こんなこと…。

チラッと横目で彼を見ると風にサラッと揺れる黒髪だけが目に映った。

麻場君と同じ…綺麗な黒髪だ。

そして耳に光るのはブルーのピアス。
白いパーカーの下から伸びる細くて筋肉のある私を支える色黒の腕。

やだ…まるで麻場君みたい。

そう思ってしまった自分の頭をぶんぶんと横に振った。


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