ぞっこん
高い身長に細い体。
サラサラと流れる黒髪に眼鏡の下から覗く涼し気な目つき。
眉はキリッ上がり、彼の一番の特徴とも言える褐色を帯びた肌…。
寡黙で本が好きで……私の理想とする王子様。
初めて見た時にキュン!って音が聞こえた気がする。
それからずっと麻場君を目で追ってしまう。
これはもしかしなくても恋だ…。
一度でいいから話をしてみたい。そう思って1ヶ月半…。
明日から夏期休暇だ。
長い休みの中、多分彼と会えるのは0に近いと思う。
図書館に通い続ければ会えるのかもしれない。
でも私の夏休みは田舎の祖父母が経営している海の家に住み込みで働くというので消えてしまう。
「はぁ……」
思わず重いため息を吐き出すと不意に麻場君が読んでいる本から目線を外しこちらに目を向けた。