ぞっこん

パチッと目と目が合い心臓が大きくドクンと脈を打つ。

カァーッと赤い頬が余計に赤くなり体から異常な程の汗が吹き出す。

私はすぐに目を逸らした。

ち、違う…ここは話せるチャンスなのに。

そう頭では思っているのに体が思うように動かない。
手に持っているシャーペンを意味もなくいじり、チラッともう一度彼を見ると麻場君はまだ私の方を見ていた。

「あっ……」

そう声に出掛かった時は私の中の何かが限界値を越えた。

バッと立ち上がり慌てて机の物をまとめると、もうダッシュで図書館を抜け出した。

その数秒、目の端で彼が笑っているように見えた。

見間違いかもしれない…。
だけど…そう思いたい。

私はドキドキする鼓動を抑えられないまま学校を後にした。


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