ぞっこん

「お姉さーん!飲み物ちょうだーい」

男性の声にハッと自分は今、ドリンク販売の途中だったことを思い出した。

「はいっ!…きゃっ!」

急いで踏み出した足が砂に遊ばれ見事にクーラーボックスごと前方に転んでしまった。

「イタタッ…」

両膝がヒリヒリ痛む。
血がジワリと滲み、砂も混ざってしまっている。

やっちゃった…。
後で流さないと…。

「お姉さん大丈夫?」

その声に顔を上げると同年代か少し上の男の人、数名が私を取り囲み覗き込んでいた。

「あっ!すみません。この通りクーラーボックスの中身は大丈夫です」

慌てて立ち上がりクーラーボックスを開き中を見せると、男の人達はキョトンと首を傾げやがてそれは笑いに変わった。

「違うよ~!お姉さんの心配だよー」

一番身長の低い男の1人がそう言うと「おい、よく見たらお姉さんって感じでもねぇじゃん」今度は日焼けのせいか真っ黒の肌な、がたいのいい人が口を開いた。


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