ぞっこん

「あっ!本当じゃん。君、名前は~?」

「天見入江です」

反射的に答えてしまい「…あっ」すぐに後悔した。

「入江ちゃんかー!可愛いね。年はいくつ?」

「この後、俺らと遊びに行かない?」

「この近くに住んでるの?」

次々と声が上がる。

「あ、あの…仕事中ですので。それに…周りにその声を待っている方もたくさん…」

言葉通り周りで見ていた水着のお姉様方の視線が痛い。

「なにあの子…」

「今のわざと転んだのよ。どう声を掛けてもらえるか知りつくしてるんだわ」

「うわぁ…」

ひそひそ声なのによく耳に届く。

それは転んだ私が悪かったけれど…そんな言い方。


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