今宵、跡が残るくらい
「だから、もっとお願い。私は貴方の唇が好きなの」
君の涙は幾度となく見てきたが今の涙は今までの物とは違って見えた。
「唇だけ?」
「唇だけじゃない。本当は貴方の全てが大好きよ」
俺も君の全てが…
隅々まで狂おしい程に愛している。
「俺も我が儘言っていい?」
「聞いてから決める」
俺は君の耳元でこう囁いた。
「爪、立ててよ」
思いっきり俺の背中に跡が残る様に。
出来る限り深く。
「ふふ、それは今?」
「後でいい。一番近付いた時にでも」
了解、と言った君の唇に唇を重ねる。
さっきとは違い優しく。