【短編】誰にも言えない【密フェチ】
誰にも言えない
下世話すぎる位の豪奢なベッドの中で、私はそのぬくもりに包まれていた。
頭の下から伸びている骨ばった腕をそっと撫でると、耳に満足そうな吐息が吹きかけられる。
撫でる私の腕を彼の左腕が捉え、指を絡ませられる。
そこに輝く金のリング。
何度も見てきたそれを、今一度脳裏に焼き付ける。
誘ったのは、私の方からだった。
新入社員だった私の教育係を務めたのが彼で、その頃から彼の薬指には、彼が誰かの所有物である印が嵌まっていた。
そんなもの、私を燃え上がらせる要因でしかないっていうのに…
絡めた指をほどいて彼の左手をそっと両手で包み込む。
右手をそうしたって得られない冷たい感触にうっとりする。
「妻と、別れようと思ってるんだ…」
ぽつりと、私に聞こえるか試しているくらいの小さな声で彼が言った。
まるで私を愛しているかのようだ。
「やめてよ。」
彼の指輪を指でなぞりながら短く切り返す。
「私のせいで別れるなんて言ったら、私も先輩のこと、捨てちゃいますから。」
あなたの骨ばった指に光る上品なリング。
そのコントラストこそが私に何よりも恍惚を覚えさせるのだから。
頭の下から伸びている骨ばった腕をそっと撫でると、耳に満足そうな吐息が吹きかけられる。
撫でる私の腕を彼の左腕が捉え、指を絡ませられる。
そこに輝く金のリング。
何度も見てきたそれを、今一度脳裏に焼き付ける。
誘ったのは、私の方からだった。
新入社員だった私の教育係を務めたのが彼で、その頃から彼の薬指には、彼が誰かの所有物である印が嵌まっていた。
そんなもの、私を燃え上がらせる要因でしかないっていうのに…
絡めた指をほどいて彼の左手をそっと両手で包み込む。
右手をそうしたって得られない冷たい感触にうっとりする。
「妻と、別れようと思ってるんだ…」
ぽつりと、私に聞こえるか試しているくらいの小さな声で彼が言った。
まるで私を愛しているかのようだ。
「やめてよ。」
彼の指輪を指でなぞりながら短く切り返す。
「私のせいで別れるなんて言ったら、私も先輩のこと、捨てちゃいますから。」
あなたの骨ばった指に光る上品なリング。
そのコントラストこそが私に何よりも恍惚を覚えさせるのだから。