本編 そんな簡単に、言うこと聞いてくれないでしょ?
「そんな綺麗な服着てるのに、肘ついて食べると台無しですよ」
当日、午前2時に約束をして、2人でケーキプレートを食べながら、年下の彼にそう指摘された私はすぐに姿勢を戻した。そういうことも言うんだと、多いに感心する。
「これから、どうします?」
 これからがあるんだと、少し驚き、
「別に、なんでもいいけど」。
「じゃあ、買い物でも行きますか。そこに新しい店できたから」
 スタイルの良い彼はファッションセンスもよく、長い脚の黒いズボンがとても目立っている。しかも、若く魅力的な彼は、ショッピングモールの大勢の視線をよく惹いた。
「バック持ちますよ、重そうだから」
「いいよ、そういうのは彼女だけにしてあげなさいよ」
「素直じゃないなあ。別にいいじゃないですか、誰が相手でも」
 自分を崩さないなあ、と苦笑してバックを手渡す。
「しかも彼女いないの知ってるくせに」
 それには答えず、先に進んだ。
「何か買います? 何でも見ていいですよ」に、始まり、「持ちますよ、荷物」、「足疲れてませんか? ハイヒール」、「喉乾いたから、お茶します? それとももう帰ります?」
 彼女じゃないのにここまで気がきいている。さすがモテる男は慣れてるなあ、と、納得しながら「いいよ、もう帰ろう。ありがと」と、駐車場を目指した。
< 2 / 4 >

この作品をシェア

pagetop