無限センチメンタル
打ち合わせが終わると、俺は今日も家に来ると言ってうるさいメンバーを振り切って1人事務所を出た。

向かう先は、もちろんあのボロアパート。

もう一度あそこに行けば、何か分かるかも知れない。

そう思うと、自然と足が速まる。


まだ夕方とはいえ、相変わらずの不気味さを漂わせているアパート。

しかし、不思議と怖いといった感情は湧いてこなくて。

俺はためらうことなく、門を乗り越えた。



薄暗い廊下に目を細めながら、真っ直ぐに進んでいく。

そして、あの一番奥の部屋のドアを勢いよく開いた。


数日前と何も変わらないガラリとした部屋。

・・・間違いない。

この部屋から色を失くし全体に白い靄をかければ、夢に出てくるあの部屋だ。

しかしどんなに目を凝らしても、あいつの姿は見えない。


俺に霊感がなくて見えないのか、それともあの部屋に実態はないのか・・・

考えても、答えなど出るはずなかった。

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