絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「まさかこんな会議になるとは思ってもみなかったわ」
「……出る幕なしって感じでしたね……」
「やなのよね、こーゆーの女に押し付ける人」
その「人」とは、宮下のことである。宮下は今日の第3回会議には出席せず出張、ではなく、デスクワークに励んでいる。まあ、主任の今井は参加しているが、その動向を不思議に思っていたが、それがこの会議の内容を聞いて納得した。今回は、とにかく、エレクトロニクスの社員が、まあ、とりあえずいてくれたら……そして、お茶でも汲んでくれたらそれでいい的な、施工に関する会議という名の顔合わせのお茶会の場? という感じで終始してしまったのだ。まあ、最初からそういうことだったのだろう。
7月1日付けの辞令が6月22日の月曜日に流れ、社内は香月の名を見てざわついただろうが、宮下が間の一週間で押さえてくれていたのだろう。久しぶりに出勤しても、嫌な目には全く合わず、今までまるでずっとここに出勤していたかのような、緩やかな時間が流れた。
今井も相変わらず普通に接してくれだ。何も変わっていない。この2週間の間にも時々ランチに行ったが過去の話は全く出ず、話題は常に新店舗のことに向けられていた。香月にできることは、ほとんど雑用に近かったが、それでもそれに携わっているメンバーとして、扱ってくれているだけで十分責任感を感じられたし、残業にも笑顔で答えられた。
「でもさ、あのデザイナーの人、やっぱ結構いい感じだったわね」
「ああいうタイプ、好きなんですか?」
会議に出席していたメンバーはほとんど作業着の中年の責任者だったので、その中で今井が評価しそうな人物は最初から1人しか思い浮かばない。
「うーん、まあね」
「インテリ系ですか?」
榊を思い出しながら、建築デザイナーの先生とやらを思い出していた。
「……どうかなあ……でも、そうかも」
多分、今井も今、私が榊を思い出したことに気づいたと思う。
「けどほとんど黙ってましたね、あの人。メガネかけてたからもともと無口なタイプかもしれませんけど」
「まあ、今日はおじいばっかだったしね」
「けど、あの人、有名な人なんですか?」
「雑誌で見たことある。イケメン建築家って」
「へー、じゃあそっちでもけっこういけるんですね」
「うん、それも狙ってると思う……香月さんどう? ああいうタイプ」
「……出る幕なしって感じでしたね……」
「やなのよね、こーゆーの女に押し付ける人」
その「人」とは、宮下のことである。宮下は今日の第3回会議には出席せず出張、ではなく、デスクワークに励んでいる。まあ、主任の今井は参加しているが、その動向を不思議に思っていたが、それがこの会議の内容を聞いて納得した。今回は、とにかく、エレクトロニクスの社員が、まあ、とりあえずいてくれたら……そして、お茶でも汲んでくれたらそれでいい的な、施工に関する会議という名の顔合わせのお茶会の場? という感じで終始してしまったのだ。まあ、最初からそういうことだったのだろう。
7月1日付けの辞令が6月22日の月曜日に流れ、社内は香月の名を見てざわついただろうが、宮下が間の一週間で押さえてくれていたのだろう。久しぶりに出勤しても、嫌な目には全く合わず、今までまるでずっとここに出勤していたかのような、緩やかな時間が流れた。
今井も相変わらず普通に接してくれだ。何も変わっていない。この2週間の間にも時々ランチに行ったが過去の話は全く出ず、話題は常に新店舗のことに向けられていた。香月にできることは、ほとんど雑用に近かったが、それでもそれに携わっているメンバーとして、扱ってくれているだけで十分責任感を感じられたし、残業にも笑顔で答えられた。
「でもさ、あのデザイナーの人、やっぱ結構いい感じだったわね」
「ああいうタイプ、好きなんですか?」
会議に出席していたメンバーはほとんど作業着の中年の責任者だったので、その中で今井が評価しそうな人物は最初から1人しか思い浮かばない。
「うーん、まあね」
「インテリ系ですか?」
榊を思い出しながら、建築デザイナーの先生とやらを思い出していた。
「……どうかなあ……でも、そうかも」
多分、今井も今、私が榊を思い出したことに気づいたと思う。
「けどほとんど黙ってましたね、あの人。メガネかけてたからもともと無口なタイプかもしれませんけど」
「まあ、今日はおじいばっかだったしね」
「けど、あの人、有名な人なんですか?」
「雑誌で見たことある。イケメン建築家って」
「へー、じゃあそっちでもけっこういけるんですね」
「うん、それも狙ってると思う……香月さんどう? ああいうタイプ」