絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
同じ榊を好きだった者同士、と思って聞かれているのなら嫌な気がしたが、今井のことだから、そこまで深くはないはずだ。
「……あんまり……」
今井にタイプを見極められるのが嫌というよりは、単に趣味ではなかった。
「えー、そう?」
「傲慢っぽくありません?」
「えー? どこが?」
そこで一瞬、実はこの建築家に声をかけられていることを話そうかどうか迷ったが、
「……なんとなく。苦手なタイプです」
「香月さん、ほんとはインテリダメ?」
「……そうですね……」
違うけど。とにかく、この、建築家、牧 智治(まき ともはる)が多分、今まで出会ってきた人の中で、一番私に合わない人だと思う。
出会いは最悪。多分女を飾りとしか思っていないメガネ野郎。
「香月さん」
って、知り合いみたいに背後から声をかけてきたのは第1回目の会議が終わって、お茶を片付けに行こうと会議室から出てきたところだった。つまり、彼は会議後すぐに部屋から出たはずなのに、その辺で隠れていて、わざわざ背後から声をかけてきたことになる。
「あ……はい」
どうしよう、何か大事なこと言われても分からないのにな、と一瞬尻込む。
「今度の新店舗のことで色々相談したいこととかあるんだけどさ。今日、時間いい?」
「えっ?」
今日……今からじゃなくて?
「あ、はい、何でしょう」
お盆もそのままに、仕事用の顔で相手を見つめた。確かに整った顔つきはしている。黒縁のセルフレームのメガネが少々嫌味な感じがするが、顔に合っていないことはない。色白の肌によく合うし、その奥の目もキリリとしており、さすが売れっ子デザイナーというのも頷ける。
「いや、ここでじゃなくて。仕事終わってから」
って、お盆片付け終わってから??
「……あんまり……」
今井にタイプを見極められるのが嫌というよりは、単に趣味ではなかった。
「えー、そう?」
「傲慢っぽくありません?」
「えー? どこが?」
そこで一瞬、実はこの建築家に声をかけられていることを話そうかどうか迷ったが、
「……なんとなく。苦手なタイプです」
「香月さん、ほんとはインテリダメ?」
「……そうですね……」
違うけど。とにかく、この、建築家、牧 智治(まき ともはる)が多分、今まで出会ってきた人の中で、一番私に合わない人だと思う。
出会いは最悪。多分女を飾りとしか思っていないメガネ野郎。
「香月さん」
って、知り合いみたいに背後から声をかけてきたのは第1回目の会議が終わって、お茶を片付けに行こうと会議室から出てきたところだった。つまり、彼は会議後すぐに部屋から出たはずなのに、その辺で隠れていて、わざわざ背後から声をかけてきたことになる。
「あ……はい」
どうしよう、何か大事なこと言われても分からないのにな、と一瞬尻込む。
「今度の新店舗のことで色々相談したいこととかあるんだけどさ。今日、時間いい?」
「えっ?」
今日……今からじゃなくて?
「あ、はい、何でしょう」
お盆もそのままに、仕事用の顔で相手を見つめた。確かに整った顔つきはしている。黒縁のセルフレームのメガネが少々嫌味な感じがするが、顔に合っていないことはない。色白の肌によく合うし、その奥の目もキリリとしており、さすが売れっ子デザイナーというのも頷ける。
「いや、ここでじゃなくて。仕事終わってから」
って、お盆片付け終わってから??