絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
 実は、巽とは半同棲状態にあり、今までのように、ユーリと真籐の3人で東京マンションで過ごすのが週5日、たいてい巽が帰ってきてくれる新東京マンションで過ごすのが週2日の割合。その他の日は連絡もあったりなかったりの、かといって、香月が休みの日にマンションに行っても帰ってきたり帰って来なかったりの、第3者から見れば非常に曖昧な関係であることに違いはないがまあ、どうということもなく、友達以上、夫婦未満という非常に広い範囲の中で接している気がする。
 マンションに帰って来てくれた日は、できるだけゆっくり会い、ただ映画を見て、まったりと寛いだり、雑誌を見て食事に出かけたりする。だが、一番重要なのは、だからといって、巽が体を求めるようなそぶりは見せず、また、香月もそれにまるで気づかないふりをしているので、つまり今は純な関係……。巽が婚姻届のことをちらっと言ったが、そこにも触れていないし、今がよければいいという実に深い絆の中の軽い関係の中で生活している気がする。
「彼氏いないのならいいでしょ? 僕の中ではいてもいいけど」
 いや、というか。何を言ってるのか、この人……。
「なら、いいかな」
 って何ですか、そのカード??
「え」
 停止、完全思考停止した。
 何故ならそのカードに、新国際ホテル7011と記された、カードキーだったからだ。
「部屋、とってある」
 へ……え??
「……」
「そんな驚かなくても」
 いやいや、驚くでしょ!! しかも今日会ったばっかりよ???
「え……いや、その……」
「初対面なのにって思ってる?」
「はい」
 間髪開けずに正直に言った。
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