絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
『伊豆の別宅。結構落ち着けるから』
「えっ……そんなだって、まあいっか、木曜休みだし」
『水曜は休みとったから』
「え゛ってなんでだから勝手に休みとるのよ! しかも10時なら仕事終わってからでも十分だし!!」
『朝の10時だよ!』
「あっ……さって、え゛―!? もう、私だってちゃんと仕事してんのよ!!」
『別に上司が休んでいいっってんだから良いだろ』
「えっ、というか、いつも誰に連絡してんの?」
『真藤』
「え……司?」
『今日はおやじの方』
「なんで副社長よ!!」
『息子だとうるせーからさ。おやじの方がゆるいんだよ、あそこは』
「そんな……あーもー最悪じゃん私!! 伊豆行くから休ませてってことでしょつまり!!」
『でもまあ、うちと仲良くやっとけばいずれ利益も出るって考えてんじゃねーの?』
「はあ……なるほどね……」
 というか、そんなことに私を巻き込まないでほしいな……。
「あーもー……何? で、その高一郎さんちに行くの? 」
『ああ。女も来るって』
「え、誰? ……最上?」
『名前は知らね』
「え、だからこの私が一緒に行った……」
『さあ、俺見てねーから』
 そういえば私たちが接触しているところは見てなかったかもしれない。
「えー、というか、最上ほんとに大丈夫なのかなあ」
『総一郎がうまくやってんじゃねえかな、あそこは』
「あそこはって……」
 参ったな、どうも雲行きが怪しい。
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