絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
翌日、朝からそのタイミングをずっと見計らい、それがようやくランチタイムに訪れた。いや、正確には、掴んだ、である。
ランチルームでわざわざ手製の弁当を広げる宮下の姿はいつもどおりであった。弁当の中身はなかなかの腕前なのか、彩りも綺麗で、いつもうまそうである。
「隣、いいですか?」
朝比奈がこうやって宮下に話しかけたのは、初めてのことだった。
「ああ、どうぞ」
宮下はその必要もないのに、コーヒーが入ったカップのソーサーを少しだけ自分の方に寄せた。
「うまそうですね。いいですね、弁当」
その一言に、宮下は突然表情を明るくした。
「妻が料理が好きでね、この前も最新のオーブンを買ったよ」
「水焼きですか?」
「うんそう。あれで作るとチーズケーキの味が違うらしい」
「へー! チーズケーキってまた難しそうですね!」
「いや、それが普通のケーキより手間がかからなくていいそうだ」
これまでに宮下は、何度か妻手製のクッキーを課に持ち込んでいたのを思い出し、
「また今度、是非味見させて下さい」
と、元気よく言っておく。
「伝えておくよ」
宮下の顔は更にほころんだ。しかし、その笑顔を見てはっと気づく。そうだ、今日はゴマを擦りに来たのではない。
「あの、それでですね。実は少し気になることがありまして……」
「何?」
宮下はちゃんと目を見て聞いてくれる。
「その、あの。ちょっと聞いたんですけど……、この、企画課に関する幹部達だけの会議というものがあるんでしょうか?」
「……さあ……、聞いたことない」
その顔は本音を言っているようだ。
ランチルームでわざわざ手製の弁当を広げる宮下の姿はいつもどおりであった。弁当の中身はなかなかの腕前なのか、彩りも綺麗で、いつもうまそうである。
「隣、いいですか?」
朝比奈がこうやって宮下に話しかけたのは、初めてのことだった。
「ああ、どうぞ」
宮下はその必要もないのに、コーヒーが入ったカップのソーサーを少しだけ自分の方に寄せた。
「うまそうですね。いいですね、弁当」
その一言に、宮下は突然表情を明るくした。
「妻が料理が好きでね、この前も最新のオーブンを買ったよ」
「水焼きですか?」
「うんそう。あれで作るとチーズケーキの味が違うらしい」
「へー! チーズケーキってまた難しそうですね!」
「いや、それが普通のケーキより手間がかからなくていいそうだ」
これまでに宮下は、何度か妻手製のクッキーを課に持ち込んでいたのを思い出し、
「また今度、是非味見させて下さい」
と、元気よく言っておく。
「伝えておくよ」
宮下の顔は更にほころんだ。しかし、その笑顔を見てはっと気づく。そうだ、今日はゴマを擦りに来たのではない。
「あの、それでですね。実は少し気になることがありまして……」
「何?」
宮下はちゃんと目を見て聞いてくれる。
「その、あの。ちょっと聞いたんですけど……、この、企画課に関する幹部達だけの会議というものがあるんでしょうか?」
「……さあ……、聞いたことない」
その顔は本音を言っているようだ。