絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「実は、一番最初に会った日、食事に誘われて行ったんです。そこで……その、アフターじゃないけど、その後……その、飲みに行くことを断ったら、この様なんです、本当は」
「ええ?? なんで早く言わないんだ? じゃあ理由、分かってたんだ」
「分かってたから、言わなかった、というか」
「ああ……。で、それ以降は?」
「だから、嫌味嫌味ですよ。僕はこの仕事、蹴ってもいいんだよ、とか。でも私は、それは私には関係ありません! って強く言うんですけどね、……すみません。けど、そこで謝っていいなりになるのは違うと思うんです」
「まあね……。いや、らしいなあ」
「何がですか?」
「言いなりにならないところが」
「普通ですよ!! だって例えあの人が設計してもしなくても、私には関係ないし。他にも腕のいい人はたくさんいると思います」
「いやまあ……だけどね。相手がしつこいんなら仕方ないけど、……ほどほどに」
「時には言いなりになれってことですか?」
「いや、そうじゃないけど……。言いなりって何? 何か要求されるの?」
「今は別に……。俺がいい男だってことを認めろ! くらいのことですかね……」
「何だそれ??」
「分かりませんけど、まあとにかく、傲慢な人なんです。あの人は。まあ、ああやって自分の事務所もってしてたらそうなるのかもしれませんけど」
 宮下は、全貌が分かり、ほっとして溜息をついた。
「いや、話し聞いてよかった。まさかそんな事態になってるとは思いもしなかったから」
「まあ、あの人は気に入らない人相手にそういう態度とる人なんだと思いますけど。だから、外見もいいし、お金もあるから、言い寄ってくる人がいっぱいいるんだろうけど、私みたいな普通の人が断ったのが気に食わなかったんじゃないですかね。けど、大きい仕事だからやってるっていう」
「……本社からの指示だって、人、変えようか?」
「いや別に、私、それくらいしかする仕事ないですから」
 ああそうだ、本題はそっちだ。
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