絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
『じゃあまあ、とりあえず10時に行くから、東京マンション』
「……分かった、用意しとく……けど木曜には帰るから、私は!」
『俺も帰るよ』
「あそう……」
 金持ちって違うなあ……。それはそうと、最上、最上。
 最上の場合、携帯にかけても出なかったので、留守電に適当にメッセージを入れておいた。
 次に巽。もしかしたら明日はデートができるかもしれないのに……。
 実は、先週は会食でデートをすっぽかされている。金曜に会えると連絡があったが、珍しく香月の都合がつかず、会えずじまいになっていた。
 午後1時前。一般人は昼食中と考えるべきだが、巽は多分きっと出勤のしたくをしている。だからつまり、電話には簡単に出る。
「おはよー」
『何だ?』
「ねえねえ、もしかして明日の夜デートなんかできる?」
『いや……ちょっと今週は無理だな……』
「えー、もうずっとじゃん……」
『週末には少し時間がとれると思うが』
「ふーん、じゃあまあ期待しないで待ってるよ」
『それくらいで丁度いい』
 じゃあ言うな!
『今日は休みか?』
「うん、明日も明後日も。密かに私三連休なんだよ。あーもー、海外でも行けば良かった」
『珍しいな』
「そ……明日はね、友達と伊豆行くの」
『何をするために?』
「知らない。私、誘われただけだから。大勢で行くんだよ。その中に会社の子もいるんだけどね。あ、最上。あのえーと」
『ああ、分かる』
「そ、まあ、ゆっくり温泉浸かってどんちゃんやろうってくらいなんじゃないのかなあ」
『せいぜい楽しんでくるがいいさ』
「仕事よりマシか……」
『そうだな。そろそろ仕事だ』
「そっか……がんばってね」
『ああ』
 思いのほか、しゃべってしまった。
 今週末デート、できればいいな……。
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