絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「……、香月?」
「……え、あ、はい」
 話しかけられていることに気づいて、なんとか返事をした。
「ちゃんと聞いてるか!?」
 酷く、耳に響く。
「……はいっ!!」
 宮下はきっと、私が裏切ったことを、忘れないだろう。
「……与えられた仕事くらいは、ちゃんとこなして……」
「……はい……」
 いつだってそのつもりだ。
「厳しい言葉かもしれない。だけど、ちゃんと心に留めておくように」
 宮下は出て行った。バタンとドアを閉めて。まるで、私が彼の気持ちを遮った時のことを、再現させるように。
「……」
 宮下が悪い。宮下が私のことを誘ったりしなければ、こんなことにはならなかったのに。彼が、仕事とプライベートを一緒にさえしなければ……彼が、彼が、彼が……。

< 151 / 423 >

この作品をシェア

pagetop