絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「月島にいたんです。彼女。その頃から知ってるんですが、その月島での癖が抜けなくて、フロアを自由に使うことに慣れてる、というか。そのことで少し悩んでる風でもありますけど……、そのことですか?」
知っているのか……。
「悩んでる、のかどうかはまだよく分かりませんが、おそらく。昨日、することがないって給湯室でお湯沸かしてました。やかんで」
「やかんで??」
「やかんで……」
「話します。……近日中に」
今宮下が、実は食事の時間もとる暇がないほど忙しいのは皆が知っている。つまりこの時間は、本当に息抜きのつもりなんだろう。
「私でよければしましょうか? その、給湯室で少し話をしたんです。悩んでるとかそういう風にはいいませんでしたが、とにかく、することがない、と……」
宮下と香月が昔付き合っていたという噂は聞いた。だが、宮下が仕事とプライベートを一緒にするような人ではないし、既に結婚をした宮下が、今更、自分が香月に寄っていこうとしても、そんなこと、なんとも思わないだろう。
「……。元々は、副社長の命なんです。ここに配属したのは」
「……え?」
全く見当ハズレの答えに、佐々木は目を大きくした。
「どういういきさつかは知りません。その、副社長命令で辞令が出る、と通告したのは僕ですが、その時も、彼女は少し不満そう、というか……そういう風でもありましたから」
「……すみません、言っている意味が分かりません」
思い切って、言う。だが宮下は、思いもよらず、
「僕も、一緒です」。
「……。けど彼女、そんなに仕事ができない、という風には見受けられません」
「そう、元々は自力で営業に来たくらいですから。城嶋さんが推薦したんですよ」
「ああ! あれが香月だったんですか! ああ、知ってます。へえー、そりゃあ、たいしたもんだ」
知っているのか……。
「悩んでる、のかどうかはまだよく分かりませんが、おそらく。昨日、することがないって給湯室でお湯沸かしてました。やかんで」
「やかんで??」
「やかんで……」
「話します。……近日中に」
今宮下が、実は食事の時間もとる暇がないほど忙しいのは皆が知っている。つまりこの時間は、本当に息抜きのつもりなんだろう。
「私でよければしましょうか? その、給湯室で少し話をしたんです。悩んでるとかそういう風にはいいませんでしたが、とにかく、することがない、と……」
宮下と香月が昔付き合っていたという噂は聞いた。だが、宮下が仕事とプライベートを一緒にするような人ではないし、既に結婚をした宮下が、今更、自分が香月に寄っていこうとしても、そんなこと、なんとも思わないだろう。
「……。元々は、副社長の命なんです。ここに配属したのは」
「……え?」
全く見当ハズレの答えに、佐々木は目を大きくした。
「どういういきさつかは知りません。その、副社長命令で辞令が出る、と通告したのは僕ですが、その時も、彼女は少し不満そう、というか……そういう風でもありましたから」
「……すみません、言っている意味が分かりません」
思い切って、言う。だが宮下は、思いもよらず、
「僕も、一緒です」。
「……。けど彼女、そんなに仕事ができない、という風には見受けられません」
「そう、元々は自力で営業に来たくらいですから。城嶋さんが推薦したんですよ」
「ああ! あれが香月だったんですか! ああ、知ってます。へえー、そりゃあ、たいしたもんだ」