絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「まあ、今日はそんなとこかな」
せっかくだから自分も食べよう、と、同じように蓋を開けた。
「司のオヤジの手は見えてる」
突然、四対は副社長のことをしゃべり始めた。だが、手は止まっていない。
「な、に?」
「お前がどうしてそこに居るのか」
香月は思い立ったように、早口で言った。
「あのっ、私、思うの。だから、私が四対さんと仲いいから、それを利用したくて、私をあそこへ置いて、それから……だから、監視、というのはちょっと違うかもしれないけど、その……」
真剣に、力をこめて、言った。
だが、四対は何も返さない。
「…………ち、違うのかな」
しかしそれでも丁寧な手つきで食べ続けていた四対は、ふとこちらの視線に気づくと
「ぷっ、ばーか」
四対は突然笑い出すと、後ろに手をついて、足を投げ出した。
「ちげーよ。アイツのオヤジがお前を利用して俺に近づかなくったって、既に仲いーし。わざわざお前をそんな課に置いて監視なんざする意味がわかんねー」
「まあ……そうだね」
そう……言われればそうなのだが。
「別に、アイツのオヤジがそこへ置いたのはただの人手不足なんじゃね? とにかく、そこに合う奴だと思ったんだよ。でなきゃそんな大事な課に監視の意味で置くはずがない。どうせ監視したいなら人事課にするだろ。俺ならな」
「まあ、そうだね……」
そりゃあそうだ。息子と組んだ方が効率がいい。
「何、じゃあ、司のオヤジにそんなとこに置かれたせいで仕事がないとか思ってたの? この前は司がいたから言わなかったけど」
「……そ」
香月は、自分の妄想がいかに恥ずかしいことだと思い知らされ、既に縮こまっている。
せっかくだから自分も食べよう、と、同じように蓋を開けた。
「司のオヤジの手は見えてる」
突然、四対は副社長のことをしゃべり始めた。だが、手は止まっていない。
「な、に?」
「お前がどうしてそこに居るのか」
香月は思い立ったように、早口で言った。
「あのっ、私、思うの。だから、私が四対さんと仲いいから、それを利用したくて、私をあそこへ置いて、それから……だから、監視、というのはちょっと違うかもしれないけど、その……」
真剣に、力をこめて、言った。
だが、四対は何も返さない。
「…………ち、違うのかな」
しかしそれでも丁寧な手つきで食べ続けていた四対は、ふとこちらの視線に気づくと
「ぷっ、ばーか」
四対は突然笑い出すと、後ろに手をついて、足を投げ出した。
「ちげーよ。アイツのオヤジがお前を利用して俺に近づかなくったって、既に仲いーし。わざわざお前をそんな課に置いて監視なんざする意味がわかんねー」
「まあ……そうだね」
そう……言われればそうなのだが。
「別に、アイツのオヤジがそこへ置いたのはただの人手不足なんじゃね? とにかく、そこに合う奴だと思ったんだよ。でなきゃそんな大事な課に監視の意味で置くはずがない。どうせ監視したいなら人事課にするだろ。俺ならな」
「まあ、そうだね……」
そりゃあそうだ。息子と組んだ方が効率がいい。
「何、じゃあ、司のオヤジにそんなとこに置かれたせいで仕事がないとか思ってたの? この前は司がいたから言わなかったけど」
「……そ」
香月は、自分の妄想がいかに恥ずかしいことだと思い知らされ、既に縮こまっている。