絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「そんな、じゃあ私にどうしろって言うんですか?! あの人に電話して、人質解放してって言うんですか? そんな……馬鹿馬鹿しいっ!」
「香月さんも、巽が関与している、と思っているんですね」
「……誰かしら、何かしらの事件には関与していると思います」
 苦しい言い訳だ。だが、自分なりに言い切った爽快感があったので、言い終わってからゆっくりと紺野を見た。
 この人……こんな怖い顔するんだ……。香月は一旦目を逸らし、俯き加減で低い声を出した。
「……、なんですか、突然自分は警察だ、なんて」
 だが、こっちばっかりが悪いわけでもない。
「……それは……大変申し訳ないと思っています」
「いつもこんなことしてるんですか? ……今井さんは知ってるんですか?」
 隣に同僚がいるんだ、とりあえず2人だけの会話にしておこう。
「知ってます。もちろん」
「私だけなんですね……知らなかったの」
「けど、あまり驚きませんでしたね」
「……別に……、どんな仕事でも同じですよ。私にとっては、今井さんの親友、……なんですよね? え、そこも違うんですか?」
 香月は目を合せて聞いた。
「いえ、親友です」
 紺野はちゃんと言い切る。
「そうですか……」
 それ以外に言いようがない。
「……巽とは今すぐ連絡がとれますよね?」
 南田が口を挟んだ。
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