絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「ねえ、何で今日来たの? だってあなた、4人でないとあの2人を2人きりにするとまずいと思ったからじゃないの!?」
「はあ!? 違げーよ。俺はただ露天風呂に入りたくなったから来ただけだよ」
「え、このタイミングで?」
「高一郎が行くっつーから来ただけ」
「えー……そうなの? そうなんだ……。……悩むなあ……」
「悩んだって仕方ねーじゃん。2人の問題だよ」
「……だって共犯者みたいじゃん、私たち」
「何が共犯なんだよ!」
 香月は会話も堂々巡りになると予想し、立ち上がった。
「寝よ、寝よ……」
 そこで障子を開けて驚く。そう、そこには布団が敷かれているとは思っていた。
 だけど、何で2つ?
「ふ……とんが2つあるんですけど……?」
「え? 何?」
「布団が2つ」
「そりゃ2人いるのに3つはいらないだろ、基本」
 そこで初めて香月は気づいた。
 伊豆の別荘の一室に自分と四対は2人、これも十分問題なのではないか?
「こ、ここで寝るの?」
「他にどこで寝るんだよ」
 気にしない人なんだろう、多分。
「……先寝るよ」
 とりあえず、並べられた布団を部屋のひとつを端に寄せ、十分な距離をとる。
 香月は布団に潜ってどっと疲れたことをようやく自覚した。3時間のドライブにはじまる伊豆旅行だったからではない。
 最上が見せたこともないような、可愛らしい笑顔を見せたせいだ。
 西野の家庭が壊れていく様を間近で見て、傷ついた人が何人もいて、こんなことは許されるはずがないと強く感じた。
 最上もそうだと思う。
 そうあってほしい。
 ……そうあるべきだ……。
 障子が開く音がする。四対が寝に来たのだろう。
 ……いびきが煩かったら嫌だな……。
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