絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「申し訳ありません、5分ほど遅れます……、はい……。
 ロビーでエレクトロニクスの方と言い争いになりました。
 警察がその方の所に、香月さんの彼氏のことを聞きたい、と事情聴取に来たようです。
 それで、その方は香月さんのことが好きだから、彼氏と別れろとしつこく付きまとって……事情を知りたがっているようでした」
 センチュリーの中の風間の声を聞きながら思った。そう、涼屋は何故か、事情を知りたがっていた。
 それも、好き、だからだろうか。
 風間の電話はすぐに切れる。
「あの、彼、今ホテルにいるんですか?」
「ええ、予定を変更されました」
「……」
 最悪だ。せっかく時間を作ってくれたのに、こんな気分じゃ、またうまく笑えない。
 ホテルまでは十数分、時間はすぐに経過するし、溜め息は一層深まるばかり。
 地下駐車場で車から降りると、数人のスーツの男達が近寄ってきて、一瞬どきりとする。だが、風間と小声で話しをすると、すぐにまた去って行った。巽の部下だろうか……。忙しいということか。
エレベーターに乗っても、気分が冴えることはない。それどころか余計、巽が忙しい時にこんなどうでもいいことで、会いに来た自分に嫌気が差した。
 エレベーターから降りた。今日は部屋はスイートではない、普通の部屋のようだ。
 ……ふ、と思い出した。
「風間さん」
 風間は、一度止まってからこちらを向いた。
「あの、……確認、というのは変かもしれないし、違うかもしれないんですけど。その……、私は別に、特に、なんとも思ってない、というか……」
 言葉が前に出てこない。
「……?」
 風間はただ黙っている。
「私がその……警察に……」
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