絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
 信じられないことに、巽は病人の頬を軽く叩き、無理矢理起こそうとしている。
 相手もすんなり目を覚ました。
「何故逃げたりした、ここへ来た理由は?」
「こっ、ここへ来たのは私たちが運んだからだよ!?」
 香月は声を出したが、巽はこちらを見ない。
「に……、妊娠、したんです」
 女の人は、涙声で小さく、言った。
「……、堕ろせ」
 え……。
 女の人は布団を頭からかぶって、泣き始める。布団が濡れるが、今はそんな場合ではない!!
「ちょっ……何で!?」
「お前は知らなくていい」
 巽はすぐに部屋から出るので、香月も追いかけた。
「何で……、私、あの人のお姉さんに会ったよ、この前」
「姉?」
 巽は睨みながらも話しを聞いてくれるようだ。
「うん、紺野……えと、まいっか、紺野さんの部下。だから刑事だよ。前事情聴取で警察に行った時」
 巽は鋭く睨む。多分、何故言わなかったんだ、と言いたいのだろう。
「ねえ、何なの? あの人のお父さんが何かしたことで、あの人が監禁されてるの?」
「お前には関係ない」
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