絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
 まあ、それも商売のためなのかな。
「あそうなんですか、じゃあ……」
「好き嫌いとかはありますか?」
「いえ、全然」
「卵とかアレルギーは?」
「それもないです」
「じゃあ何でも大丈夫ですね。では、明日また持ってきます。持ってきたら冷蔵庫に入れておくんですが、また帰りに渡しますね」
「冷蔵庫って……」
「商品部にはあるんですよ。一つ冷蔵庫を置いて、皆で使ってるんです」
「へー!! それ、便利ですね!!」
「ええ……、じゃぁ、一応、携帯聞いておいていいですか? 退社する時電話でもメールでも、直接来てもらってもかまいませんけど」
「じゃぁ、……」
 香月はもちろん携帯を取り出した。赤外線のおかげで情報はすぐに伝わる。
「……偶然に、感謝ですね」
 伊吹は小さく言う。
「そうですね! ありがとうございます」
 香月もそれに笑顔で答えた。

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