絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

『もうちょいしたら着くから』
「………どこに??」
『東京マンション』
「え゛っ!? 約束してたっけ??」
『いや。仕事かったるいから抜けてきた』
「ええ゛―!? いいの!?」
『いいのいいの、そういうのは社長が決めるから。社長の特権♪』
「……え゛、まだ私、今起きたとこなんですけど」
『適当に着替えて降りて来いよ』
「……で?」
『飯でも行くにはちょっと早いから、買い物でもすっか』
「え、待って!!」
『何か文句でもある??』
「ないけど……待って。すぐ着替える」
 ったく社長なら……
「仕事しろよぉ……」
 香月はだるい体を引きずって、いや、ムチ打って、大急ぎでベッドから抜け出した。
 四対財閥の社長ともあろう者がそんなで大丈夫なのか……。
 んでしかも、買い物で食事って、……あの人どんな格好でここまで来るんだろ……。仕事から抜けて来たってことは、バリバリのスーツ着てんだろうなあ……。
 それに合うワンピースをすぐに頭が選んだ。思えば、四対との逢瀬は突然な時や遠出の時が多く、安物の服の時が多いので、あんまり綺麗な恰好をしたことがないかもしれない。
前回の安物のデザインスーツで痛い目を見たせいもあり、今回は巽とのデート用衣装でもある、ブランド物のワンピースで行くことにした。
 香月はフルスピードの15分である程度完成させる。その時、もう一度、電話が鳴った。
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