絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「年、下すぎ……」
「今井さん、年上派ですか?」
 多岐川が聞いた。というか、総務の多岐川と今井の接点が何か知らない。しかも、あまり合いそうにないのにな……。香月も多岐川と喋ったのは今が初めてで、ただなんとなく食堂で見たことがあるだけだった。
「うーん……今好きなのは、同い年。香月さんの元彼」
「え゛!?!?」
 全員から一斉に視線を浴びた。
「えっ!? いや、元彼とかじゃなくて、その、知り合いですよ!! 学生の頃から知ってる、知り合い!! だからもう、古い付き合いなんです!!」
「どんな人!?!?」
 多岐川と庶務課は同時に聞いた。
「えーと……」
 ナルシストで、無神経で、無関心で、かっこつけ??
「えーと……」
「職業は?」
 と、庶務課。
「医者」
「いしゃー!! いいじゃんいいじゃん!!」
 ここに来て、庶務課は一番の盛り上がりを見せた。
「顔は!?」
「イケメン」
「そりゃ仕方ないわ。好きになっても」
「なんでいかないんですか?」
 多岐川は痛い一言を無神経に差し込んだ。
「なんというかねえ……。昔、付き合ってたの、その人と。それが忘れられないのかなあ……」
「……何年前の話?」
 庶務課は聞いた。
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