絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
 時刻は午後9時半を過ぎている。
「出ません……ね……」
「けど、約束取り付けてくださいよ!! 絶対お願いします!! で、約束が決まったら私に連絡ください!!」
 多岐川は、突然自分の携帯を出してきた。
「あ、うん」
 香月は仕方なく、赤外線でその情報を受け取る。
「四対財閥かあ……」
 そこで溜息とともにその話題が終焉に向かったと思ったら、
「けどさ、この前私、雑誌で見たんだけどさ。附和薫って知ってる?」
 香月はワインを吐きそうになるのを必死で堪えた。
「ごほっ、ごほっ!!」
「大丈夫?」
 成瀬が気にしてくれる。
「う、うんうん」
「超私の好みだった」
 庶務課……あの人も性格悪いぞ?
「まさか香月さん、こっちも知り合いなんじゃない??」
 今井が言い出す。
「そっ、そんなわけないじゃないですか!!」
「知ってる? 附和財閥の御曹司。最後の独身って言われてるのよ」
「……どんな雑誌に出てたんですか?」
 香月は恐る恐る聞いた。
「ファッション誌。レストランスカイ東京のオーナーとしてね」
「……へー……」
 手広いなあ……。
「これこれ!!」
 ってその雑誌持ってんのかよ!!
 はー……あ、夜景をバックにビップルームで撮影……この人がスーツ着てんの初めて見たかもしれない。そんなことないか、この前こういう恰好でうち来たな。
「……この人、エレベーターの前にいなかった?」
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