絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「やってるの自分じゃないですか!! 」
「ね、今の楽しかったね。愛はずっと無言で」
 突然の呼び捨てにかなり動揺しながらも、
「そっ、あなたが無言だから!! 附和さんがしゃべらないんなら、私だって喋りませんよ!」
「あそう?」
「そうです」
 あー、緊張して、損した。
「大丈夫。もうキスしたから気がすんだよ。さ、シャンパンでも飲もう、飲もう」
「……」
 附和は納得したのか、部屋の奥へ入り、室内電話でルームサービスを頼んだ。部屋の中心にこれみよがしに置いてあるダブルベッドが気になって仕方ないので、ずっと顔をそむけておく。
「何? まだ警戒してるの? 大丈夫。俺あんまり性欲ないから」
「!!」
 そんなこと聞いてませんけど!!
「年じゃないと信じたいんだけどねえ……」
 そのままバスルームへ入る。まさか、そういいながら先にシャワー浴びる気か!?
 ガラス越しに透けて見えるバスルームで、彼は何とも思っていないのかそのまま服を脱ぎはじめた。
 ちょっと、ちょっと、どうなってんのよ!?
と思いきや、すぐに彼は出てくる。バスローブを羽織ってはいるが、ただ着替えただけのようだ。
「はーあ。疲れたー。ごめんね、バスローブに着替えさせてもらうよ。スーツ窮屈だから」
「別に……」
 とりあえず、顔は逸らしておく。
 インターフォンがすぐに鳴り、シャンパンとグラスが2つ運ばれてきた。2人は窓際のテーブルを挟んで椅子に腰掛ける。
「じゃあ、乾杯しようか」
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