絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「こんばんは……」
 よりにもよって……、伊吹とは……。香月はすぐに廊下を歩いてリビングに戻った。
「遅かったねー、忙しいの??」
 今井が代表して聞いた。
「いや、今日は運が悪くて」
「今ねー、……色々盛り上がってたんだよねー」
「そうそう、香月さんの男友達について」
 庶務課は笑って報告した。
「ちっ、違いますよ!! 偶然です、偶然」
 伊吹は庶務課の右隣に座った。というか、もうそこしか空いていない。
庶務課は突然スイッチが入ったように、動き始める。そのことに、全員気がついたが、もちろん微笑して知らんふりをした。
「あ、伊吹さんはどうして香月さんの彼氏が、四対財閥の人だと思ったんですか?」
 なんつー質問するんだ多岐川!!
「ああ。実家に2人で来られたので」
「ぐっ、偶然そこでばったり会ったんですよ!!」
「けど違うんだって」
 今井がちゃんと報告した。
「はい、知ってます」
 まともに言うなー!!
 香月は生きた気がしなくなって、ついにグラスを置いた。
「この前、会いましたから」
「どんな人なんですか!? もしかして、その人もすっごいお金持ち!?」
 多岐川がはしゃいだ。
「なんかさあ、さっきから聞いてると、香月さんの周りって信じられないくらいお金持ちなのよねえ」
 庶務課は何が不満なのか……。
「あ、そういえば、昔ロールスロイスで出社してましたよね?」
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