絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「えっ!?」
 何を言い出すんだ、成瀬!!
「ずっと前、太政さんが言ってた気がするけど」
「えっ、そ、それは……」
「僕と会ったときはセンチュリーでしたね」
「ちょっと、何者なの!?!? 言いなさいよ!!」
 今井はもはや怒りに近い声を上げた。
「いや、そんな、何者って……」
「普通の人でしたよ」
 代わりに伊吹が答えたが、それでは答えになってはいない。
「そんなわけないじゃん!!」
「四対さんの友達ですか?」
 多岐川が分かりやすく質問した。
「ううん。うーん、違う。友達じゃない。知り合い、程度ではあるけど」
「ほらね、やっぱり。普通じゃないよ」
 庶務課……ねえねえ、私の何が悪いの??
「………」
 香月は明らかに不満な顔をすることにした。そうしないと、なんか私が悪いみたいではないか。
「……今日はこれだけですか?」
 伊吹が今井に聞いた。
「うんそう、これで全部」
「けど今日来た甲斐ありました!! 香月さんが四対さん紹介してくれるなんて……」
 多岐川は既に何か違う方向を向いている。
「え、あー……」
 紹介、とはちょっと違うかもしれない。
 香月はもう一度携帯を開いた。まだ着信はない。
「へー……多岐川さんに、四対さんを?」
 伊吹が聞く。
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