絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「待って。飲まないでください」
「何で?」
「酔われると困ります! まだ電話してもらわないと……」
「……それもそうか。じゃあ1杯だけにしておくよ。せっかくだから、一緒に乾杯」
 グラスとグラスが鳴り、とりあえず一口は飲んだ。冷たくて、美味しい。
「あ、美味しいですね。これ」
「うんそう。最高級だからね」
「飲みやすい……」
「うん、そうだね」
 え、何?
 眠い?
 突然の眠気。
「どうしたの? もー、酔うなって言いながら自分が先酔うんだから(笑)。仕方ないなあ……」
 附和の声と附和の唇の柔らかな感触。
 唇塞がれると苦しい……。
「正直でしょ、僕」
 何が……。
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