絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
 思いもよらない因縁をつけられたせいか、返す言葉が見つからない。
「……、そもそもは私の知り合いなんだから、今更よく見せる必要は私にはありません! ……完全に怒って帰りましたよ、あの人」
「謝れば済むでしょ、友達なんだから」
「……」
「あーあ、出て来て損した。香月さん、ほんっと自分のいい顔ばっか」
 多岐川はくるりと振り返った。その瞬間、ふわりとスカートが膨らむ。
 だが香月はその後姿を、怒りに満ちたその後姿を涙目で見つめるしかなかった。
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