絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

「今どこ?」
『会社だ』
「電話できる? 長電話」
『……15分なら』
「最悪だよ……」
 空を見上げた。やっぱりまだ曇っている。そう、さっきからほんの30分経ったかどうかくらいだから、天気はそうそう変わらない。
『どうした? 会社か?』
「ううん、今日休み……」
 巽は真剣に話しを聞いてくれそうな声を出してはくれている。だが、もしかしたら、右手は止まらず、ペンを急いで走らせているのかもしれない。
「昨日さあ……会社の女上司の家で飲み会があってね、2つくらい年下の女の子と知り合って。で、私が四対さんの友達ってことがひょんなことからバレてね、紹介してって言われたの」
『うん』
「でもさ、四対さん、忙しそうじゃん。だから……呼び出すとか本当はしたくなかったんだけど、まあ、少しなら、と思って。出て来てもらうことにしたの。
 でもね、突然ランチしようとか、そういうの、なんか……あれだったし……。
 そう、私はね、ランチしようとか、カフェ行こうとか、そういうの、私からは誘えないなあって思っててね!!」
『ダイビングには誘えるのに?』
「それは完全な娯楽だけどさ、なんというか、ああいう人って、ランチとかはなんか、仕事半分じゃん。だから……。
 でね、どうにか考えて、アップルパイ作るから取りに来てってことにしたの。いや、持って行くとは一応言ったんだけど、取りに来るかなあって思ったの!
 でねー、で、四対さんが、今日は中央公園の近くで仕事してて少し間があるっていうからさ、その会社の子と偶然公園で鉢合わせたフリしたんだけどねー……。
 ランチの方が良かったのかなあ……」
『別に、どっちでも同じだろう。四対が興味を持つとは思えん』
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