絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「まあねー……そうなんだけどさあ……そう、私もそう思ったから、こう……適当にしちゃったのかなあ……いや、考え抜いた結果だよ!! もし、2人がお互い興味持ったら、持ったでうまくいってたはず!!」
『で?』
「で?……その会社の子が積極的に話しかけすぎて、四対さん怒って帰った。で、会社の子に、手作りのケーキなんかもって来るのは自分をよく見せたかったからでしょって言われた。
 けどね、私は……」
『悪い、来客だ。また後でかけなおす』
「……うん」
 巽は突然、いとも簡単に電話を切った。
 そりゃそうだ……巽には全然関係ないことだ……。
 見つめた空は灰色。目の前のレンガ調のタイルには、落ち葉。ああ……、今何か、思い出しそうだったのにな……。
「追いかけてもこねーのかよ」
 その声にびっくりして隣を見た。
「あっ……ご、ごめんっ……」
「誰あれ?」
 四対は言いながら再びベンチの隣に腰掛けた。
「……会社の子。四対さんと伊吹に行ったのを知られて、紹介してって言われた」
「それでアップルパイ作ったのかよ……」
「だって、ランチとかに誘ってって言われたけど、そんな忙しいのに誘えないと思ったし。……それなら、私が会いたいって誠意を見せれば、それに……応えてくれると思ったんだけど……」
「お前の会いたい、じゃないのに?」
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