絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
 四対は驚いた表情を見せた後、すぐに謝る。
「リンゴの皮だからダメなのかなあ……」
「皮!? ……豚じゃねえんだから」
「……」
 豚じゃなくたって、リンゴの皮くらい食べるに決まってる!! と言いたくても、今日は我慢。
「埋めあわせしろよ、当然」
「あ、うん……」
「また連絡すっから」
「うん……」
「あと、あいつの隣から電話かけてくるのだけはやめてくれ」
「え、ああ…、……何で?」
「……この前みたいに電話かわるとウザイから」
「あー、気をつけるよ。けどあの人は四対さんのこと、好きだと思うけど」
「はあ!? ……俺、そういうシュミないから」
「いや、好きというかね!! 嫌いじゃないと思うんだけどなあ……」
「……」
 四対は腕時計を見た。どうせ高級品に決まっている。
「箱、捨てといてくれる?」
「え、あ……」
 まだ中入ってるに決まってる。
「うん」
「何だよ、食べてるに決まってるだろ」
「えっ!? 全部!?」
「アップルパイ、あんま好きじゃねーから。今度からはチーズケーキにしてくれ」
「あっ、ごめん……」
「じゃあな」
「うん、今日はごめんね!!」
 歩き出した四対の後ろから少し大きな声で言った。
 だが四対は、振り返りもせず、ただ前を向いたまま、左手を上げた。
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