絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ

『もしもし?』
「もしもしぃー!!」
『いやにハイテンションだな』
「電話したかったのー!! 電話待ってた」
『あとでかけなおすと言ったろ?』
 後ったって、あれから10時間も経っている。
「今どこ?」
『京都にいる』
「なんだ……こっちにいないんだ」
『……四対がどうしたって?』
「どうしたもこうしたもないけどさあ……。私と四対さんは友達だったんだなあって、そういうことだったんだよ……」
『俺はそうだと思っていたが』
「えっ、そうなの!?」
『少なくとも、四対の気持ちはそうだと思っていたが』
「そうだったんだ……ぜんぜん気づかなかった……。
 でね、だから、四対さんを紹介してって会社の女の子に言われて、アップルパイ作ったから食べてって作戦にしたんだけどお、四対さんはその子に全然興味持たなくて、怒って帰って、その会社の子からも、怒られた。手作りなんて、自分をよくみせようとしてるだけだって!
 でねー、でもその後、四対さんとはなしして、友達なんだから、最初から素直に話せって言われた」
『……普通そうだろう』
「えー!! だってね、だってね……そんな、四対さんにさあ、会社の女の子が紹介してほしいんだけどって言ったって、来ると思う!?」
『お前の顔を立てるためなら、行っただろう。そもそも、お前が、顔を立てるほどの仲じゃない女をむやみに紹介しようなんぞするから、両方に叱られるはめになるんだ』
「……そうかも」
『……甘くみすぎだ。何もかも』
 巽の言葉は、一つ一つ重い。
「……そうかなあ……、そんなことないよ、あなたとのことは真剣に考えてる。だから私は、あなたのこと以外は真剣に考えなくてもいいと思ってる」
< 352 / 423 >

この作品をシェア

pagetop