絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「でも、あの時防犯カメラが作動していなかったら、私が懲戒解雇になっていたんですよね……」
香月は、テーブルを見つめて更に続けた。
「西野さんは本当はそれを望んでいたのかもしれない。それに私も、西野さんを振り回していたというのなら、それに見合う代償をどこかで払わなければいけないのかもしれない」
「……身代わりとか言うなよ」
宮下は見つめて難しい顔をする香月を先に制した。
「そう言い出さないために、一応ここへ来ることは、他の人にも言ってあるし、防犯カメラの映像も数人には見せてある」
「…………」
先手を打たれた香月は、それでも何か、言葉にしようとした。
「この前は最上の身代わりになったんだろ!? 運よく戻って来られたから良かったものの……」
「じゃあ西野さんは、このままで良いんですか?」
宮下の意見を聞いてみたくて質問した。
「いいよ。それは本人が判断してしたことだ。それに、香月が庇ってくれると過信して、わざと香月が契約の時を狙ってしたのかもしれない。そう考えれば、なおさら香月が身代わりになることはない。そんなことは絶対にさせない」
「……、……」
何か言葉にしたかったが、できなかった。
「ようやく、最上のゴタゴタから解放されて、ここまで来たんだ。ここで懲戒免職にお前がなってどうする!?」
宮下は、テーブルを強く叩き、声を荒げた。目が真剣そのものになっていることに気付いて、香月は顔を伏せた。
防犯カメラがある状況で、本気で身代わりになれるとはあまり考えていなかった。だけど、そのくらいの誠意を持っていなければと、思ったのだ。
だが、宮下は予想以上に怒りをあらわにし、
「いい加減にしろ。救ってやってる方の身にもなれ」
そのまま、テーブルの隅の伝票を手に取り、立ち上がった。
「明日朝10時。必ず本社に来い。……いや、迎えに行く。自宅に」
宮下はきつく睨んだ。
「……自宅には、いません。自分で行きます」
「出社前に電話をする。迎えに行くよ。それから出社する。場所は?」
「…………新東京マンションです」
「分かった。……7時半に着くように行く。少し早いが、香月にも資料を見ておいてもらう」
そこまできいて、目を伏せた。同時にどんどん頭も下がってきてしまう。
「香月……」
宮下は一歩寄って、肩に手を置いて溜息をついた。
香月は、テーブルを見つめて更に続けた。
「西野さんは本当はそれを望んでいたのかもしれない。それに私も、西野さんを振り回していたというのなら、それに見合う代償をどこかで払わなければいけないのかもしれない」
「……身代わりとか言うなよ」
宮下は見つめて難しい顔をする香月を先に制した。
「そう言い出さないために、一応ここへ来ることは、他の人にも言ってあるし、防犯カメラの映像も数人には見せてある」
「…………」
先手を打たれた香月は、それでも何か、言葉にしようとした。
「この前は最上の身代わりになったんだろ!? 運よく戻って来られたから良かったものの……」
「じゃあ西野さんは、このままで良いんですか?」
宮下の意見を聞いてみたくて質問した。
「いいよ。それは本人が判断してしたことだ。それに、香月が庇ってくれると過信して、わざと香月が契約の時を狙ってしたのかもしれない。そう考えれば、なおさら香月が身代わりになることはない。そんなことは絶対にさせない」
「……、……」
何か言葉にしたかったが、できなかった。
「ようやく、最上のゴタゴタから解放されて、ここまで来たんだ。ここで懲戒免職にお前がなってどうする!?」
宮下は、テーブルを強く叩き、声を荒げた。目が真剣そのものになっていることに気付いて、香月は顔を伏せた。
防犯カメラがある状況で、本気で身代わりになれるとはあまり考えていなかった。だけど、そのくらいの誠意を持っていなければと、思ったのだ。
だが、宮下は予想以上に怒りをあらわにし、
「いい加減にしろ。救ってやってる方の身にもなれ」
そのまま、テーブルの隅の伝票を手に取り、立ち上がった。
「明日朝10時。必ず本社に来い。……いや、迎えに行く。自宅に」
宮下はきつく睨んだ。
「……自宅には、いません。自分で行きます」
「出社前に電話をする。迎えに行くよ。それから出社する。場所は?」
「…………新東京マンションです」
「分かった。……7時半に着くように行く。少し早いが、香月にも資料を見ておいてもらう」
そこまできいて、目を伏せた。同時にどんどん頭も下がってきてしまう。
「香月……」
宮下は一歩寄って、肩に手を置いて溜息をついた。