絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
「……今は、ここで暮らしています」
「ボスは何も言いませんが、心配していると思います」
「心配なんか、してません」
 香月は早口になる。
「私、別れたんです。私がもう別れようって言ったんです。それで私、……いろいろあって……」
「愛!!」
 後ろから大声で呼ばれて、口を閉じた。
「ごめんなさい……」
 それだけ言うと、風間から離れた。後ろでは、水野のしたたかな声が聞こえる。
「私のに、何か用ですか?」
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