絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
結局、その当日からすぐに巽が手配したアパートに入って布団一枚ない、ただの床でバックを枕にして寝た。飲み会でもないのにそんな場所で寝たのは初めてのことで、起き上がると背中がとても痛かった。気持ちが随分楽になったわりに、眠ることはできなかった。
朝日を見るなり、溜め息が出る。
今日から、新しい仕事を探さなければならない。
何がいいだろう……。今すぐ現金がない以上、日雇いの仕事がいいに決まっている。
しかし、洗面所の水道で顔を洗っていて気づいた。そうだ、まず今日の朝ごはんがない。朝ごはんどころか、昼ごはんもない……。
落胆する気を紛らわすために、水を一口飲んだ。もう一度飲む。もう一度……何度でも飲む。
胃の中が冷たくなった。
突然涙が溢れた。食べる物がない、仕事もない、お金もない、何もない……。
大声で泣いた。誰もいないのをいいことに、初めて声を出して泣いた。
ここ数ヶ月の思いが、一気にあふれ出た。あの一夜の選択で、自分の人生がここまで変わるとは、正直思っていなかった。自分の考えが、かなり甘かったことを思い知らされた。
全部リセットしてしまいたい……。
何度も思った。だけど実際にはそれだけの勇気もなく、目まぐるしいスピードで毎日が過ぎていった。
ピンポーン。
インターフォンが鳴った。誰だろう。大家だろうか。慌てて涙を拭いて、玄関の覗き窓から確かめた。
「風間さん!!」
すぐにロックとチェーンを解除する。
「おはようございます、眠れましたか? これ、朝ごはん……」
風間は、到底朝ごはんだけとは思えないほどの量、レジ袋大2つを両手にかかえてやってきてくれた。
袋からのぞいているのは、数々のパンやラーメン、そしてたくさんの飲料水……。
差し出された袋を受け取る代わりに、風間に抱きついた。きつく、強く、腕に力を込めた。
「大丈夫ですか? ボスは心配していますよ」
このまま……消えてしまえたら。
人生をリセットできたら、どんなにいいだろう。
「大丈夫ですか?」
優しく、頭を撫でてくれる。
朝日を見るなり、溜め息が出る。
今日から、新しい仕事を探さなければならない。
何がいいだろう……。今すぐ現金がない以上、日雇いの仕事がいいに決まっている。
しかし、洗面所の水道で顔を洗っていて気づいた。そうだ、まず今日の朝ごはんがない。朝ごはんどころか、昼ごはんもない……。
落胆する気を紛らわすために、水を一口飲んだ。もう一度飲む。もう一度……何度でも飲む。
胃の中が冷たくなった。
突然涙が溢れた。食べる物がない、仕事もない、お金もない、何もない……。
大声で泣いた。誰もいないのをいいことに、初めて声を出して泣いた。
ここ数ヶ月の思いが、一気にあふれ出た。あの一夜の選択で、自分の人生がここまで変わるとは、正直思っていなかった。自分の考えが、かなり甘かったことを思い知らされた。
全部リセットしてしまいたい……。
何度も思った。だけど実際にはそれだけの勇気もなく、目まぐるしいスピードで毎日が過ぎていった。
ピンポーン。
インターフォンが鳴った。誰だろう。大家だろうか。慌てて涙を拭いて、玄関の覗き窓から確かめた。
「風間さん!!」
すぐにロックとチェーンを解除する。
「おはようございます、眠れましたか? これ、朝ごはん……」
風間は、到底朝ごはんだけとは思えないほどの量、レジ袋大2つを両手にかかえてやってきてくれた。
袋からのぞいているのは、数々のパンやラーメン、そしてたくさんの飲料水……。
差し出された袋を受け取る代わりに、風間に抱きついた。きつく、強く、腕に力を込めた。
「大丈夫ですか? ボスは心配していますよ」
このまま……消えてしまえたら。
人生をリセットできたら、どんなにいいだろう。
「大丈夫ですか?」
優しく、頭を撫でてくれる。