絡む指 強引な誘い 背には壁 Ⅳ
 言葉は相変わらず乱暴な四対だが、かといって行動がそうというわけでもなく、魚をはじめとする海の自然には十分優しい人間であった。
 むしろ、「これ食べられるのかな?」と発してしまっている自分の方が乱暴なくらいである。
 意外に早く時間は過ぎ、夕方になって海をあがり、午後7時にはまた同じジェット機に乗って、ようやくオーストラリアを離れた。
 機内では珍しくよく眠れた。皆も疲れたのか、行きとは比べ物にならないくらい静かである。
 そして帰り、想像以上にいい経験ができたなと思いながらも、オーストラリアで着たティシャツそのままで寒々帰るわけにはいかないので、用意してくれたロールスロイスに乗り込んだ。つまり、大勢乗れるのだから、バス感覚のつもりだったのに、後に乗り込んだのは四対だけで、最上もどの便で帰ったのか分からなくなってしまった。
「あの……」
 その辺でいいですから、の一言を待たずに彼は、
「ん」
 と、もちろん冬衣装の胸ポケットから一台の携帯を取り出してきた。当然とばかりの最新機種、だが色はピンク。
「え?」
 私のじゃないですけど。
「受け取れよ」
 仕方なく、受け取る。
「登録してるのは俺の番号だから」
 えっ!? これがお金持ちの携帯番号の聞き方!?
「え……と」
 つまり結局、どうすればいいのか?
「何だよ」
 ってだって何でかしらないけど、さっきから四対は窓の外見てるし、この携帯をどうしていいのか分からずに、こっちも見つめるしかないし。
「あのこれ、どうすれば……」
「電話だよ」
 知ってるよ!!
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